2026年9月の記事一覧

河瀬 玲奈主任研究員が「2026年度地球環境シンポジウムで地球環境優秀講演賞」を受賞(2026年9月)

 2025年9月に鳥取大学で開催された第33回地球環境シンポジウム(土木学会地球環境委員会主催)の発表において、当センターの河瀬玲奈主任研究員が地球環境優秀講演賞を受賞しましたので、お知らせします。(表彰式:2026年9月)

地球環境優秀講演賞は、地球環境シンポジウム講演集に地球環境問題に関する論文を発表し、これが土木・環境工学における学術・技術の進歩発展に寄与し、独創性と将来性に富むと認められたものに授与されるものです。

賞状

 

【地球環境優秀講演賞】

受賞論文:世帯類型および住宅選好を考慮した家庭部門の二酸化炭素排出量の推計

受賞者:河瀬 玲奈 (滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)/日比野 剛(国立環境研究所)/金森 有子(国立環境研究所)/石河 正寛(住環境計画研究所)/大田 宇春(みずほリサーチ&テクノロジーズ(株))/平山 智樹(みずほリサーチ&テクノロジーズ(株))

 

※所属は発表当時

※土木学会地球環境委員会HP掲載

https://committees.jsce.or.jp/global/node/107

瀬戸内海研究フォーラムin京都で講演とポスター発表を行いました(9/3-4)

 当センターが共催する「第33回瀬戸内海研究フォーラムin京都~流域圏と瀬戸内海~」(主催:特定非営利活動法人 瀬戸内海研究会議)が、2026年9月3日(木)・4日(金)京都大学で開催され、当センターメンバーが運営委員、講演、ポスター発表さらに討議等を行いました。

 初日は、開会式、基調講演と2つのセッションが行われました。「水域の物質循環と豊かな生態系保全に向けた取り組み」と題する第1セッションでは、佐藤専門研究員が「琵琶湖の水質保全と生物資源保全は両立できるか?―モデルを用いて琵琶湖の「健全さ」を測る新たな指標を探る―」の題目で講演しました。本講演は、量ストックに注目した従来の湖沼評価だけではなく、循環フローに注目することを提唱するものであり、シミュレーション結果からそれを検証しています。すでに過剰な栄養塩規制が問題視されている瀬戸内海と対比される琵琶湖の水質・生物資源バランス問題を取り扱う講演で、大きな注目を得ました。

 第2セッションは、「瀬戸内海と周辺地域の環境・経済・社会に関する研究活動報告」と題するポスター発表のセッションです。セッション前半は、1人1分に限定したフラッシュ口頭発表であり、その後、それぞれの発表者がポスター前でその研究内容を説明しました。本センターからは、琵琶湖のアオコ、底層DO、最近の水質特性、アオコのドローン観測、マイクロプラスチックさらに油類判別の6件を発表しました。ポスター会場では、多数の人が質疑に参加し、活発な討議で大いに賑わいました。

 2日目は、「流域圏における安全・安心な環境創造」、「流域圏における社会の営み~みんなで海を食べる。~」の2つのセッションとポスター前発表が行われた後、表彰式・閉会式で2日間のフォーラムは終了しました。表彰式は、公募によるポスター発表のうち、表彰を希望する若手(40歳以下)や学生を対象に、優秀なポスターに対し与えるもので、28名が応募しました。選考は1分間フラッシュ口頭発表、ポスターの内容およびそのポスター前説明を評価項目として、ポスター選考委員が採点して行われます。その結果、3名が表彰され、その最優秀賞には、「琵琶湖上流の水田地帯からの被覆肥料殻の流出特性と琵琶湖全体での負荷量推計」を発表した当センターの横山研究員が選ばれました。

 本フォーラムの参加者は、合計157名でしたが、センターからは、運営委員、講演者、ポスター発表者さらに聴講者として13名が参加し、本フォーラムの活性化に貢献しました。また、その発表を通じて琵琶湖の抱える各種の課題を一般に広める良い機会となりました。

 

プログラム

 

佐藤専門研究員の講演に対する質疑の様子(同フォーラム事務局提供)

 

ポスター発表の様子

  

最優秀賞受賞ポスター前での集合写真

(受賞者の横山研究員は右から4番目)

インターンシップ実習生が当センターを来訪しました(2026/09/02)

 2026年9月2日(水)午前、県庁関係課、環境事務所のインターンシップ実習生7名が、センターの施設見学と調査船「びわかぜ」による調査実習を行いました。

 施設見学では、センターの概要、業務内容の説明を受けました。その後、環境監視部門の実験棟で、琵琶湖水のCOD分析やプランクトンの検鏡の様子、水質や大気の測定に使用する分析機器(ICP-MS、GC-MS、LC-MS/MS他)の見学をしました。

 その後、インターン生は調査船に乗り込み、琵琶湖水質調査地点2地点(南比良沖中央:水深約60m、唐崎沖中央:水深約3m)で、透明度の測定等の実習を行い、南湖と北湖での色相の違いを確認しました。北湖の調査地点では、バンドーン採水器で水深50mの水を採水し、表層水との水温の違いを体感しました。また、調査地点への移動中には、琵琶湖水質調査の概要と水質の概況についての説明を受け、琵琶湖水質への理解を深めました。

 大気・水質、再生可能エネルギー、プラごみ等、様々な環境課題に関心を寄せる実習生たちが、今年度から新設された「総合環境職」の業務の一端を体験し、将来のキャリアを考える良い契機となりました。

COD分析見学の様子

調査船内での説明の様子

透明度測定の様子

おおつ市民環境塾のプランクトン観察会を支援しました

 2026年8月23日(日)、びわ湖大津館にて「おおつ市民環境塾」(主催:おおつ環境フォーラム)が開催され、当センターの職員がプランクトン観察会のサポート講師として参加しました。

 当日参加者は、まず、会場近くの湖岸に移動してプランクトンの採取を体験した後、講師によるプランクトンの生態や役割についての講義を受けました。続く観察会では、参加者一人ひとりが生物顕微鏡を覗き込み、採取したばかりのプランクトンを熱心に観察しました。

 今回のプログラムでは、採取した南湖のプランクトンの観察に加え、あらかじめ用意された北湖のプランクトンのサンプルと比較する試みも行われました。参加者たちは図鑑を片手に「これは何の仲間だろう」と熱心に同定作業に取り組み、水質や環境の違いによって生息するプランクトンの種類や量にどのような差があるのかを、身をもって学んでいました。

プランクトンの採取を体験

プランクトンについての講義

北湖と南湖のプランクトンの比較

みんなのBIWAKOエキスポが開催されました

 2021年に策定されたマザーレイクゴールズ(MLGs)を契機に毎年開催してきた「みんなのBIWAKO会議」は、「みんなのBIWAKOエキスポ」と題して、イオンモール草津で2026年8月27日(木)に開催され、幅広い年齢層の多くの参加者でにぎわいました。

 MLGsは、琵琶湖を切り口とした2030年の持続可能社会へ向けて設定した目標(ゴール)で、13のゴールがあります。当センターは、その案内人や3つゴールの学術委員を担っています。みんなのBIWAKO会議ではこれらゴールの評価報告を行う、「MLGsの進展報告セッション」のほか「つながるブースセッション」「フィナーレ」の順で開催されました。

 「MLGsの進展報告セッション」では、佐藤専門研究員が、MLGs案内人代表としてその中間報告をするとともに、その評価報告書「シン・びわ湖なう2026」の5年間の総括報告および「ブースセッションリーダー紹介」に登壇しました。

 「つながるブースセッション」では行政・企業・活動団体・学校等から44のパネル展示が行われました。当センターは琵琶湖水質変遷・現況解説とビワマス保全活動の2件の展示を行い、多数の訪問者の注目を集めました。

「フィナーレ」ではMLGs体操、ブースセッション総括、琵琶湖周航の歌大合唱が行われました。

 また、みんなのBIWAKO会議後に滋賀県と国際湖沼環境委員会(ILEC)の共催で国際イベントが開催されました。イベントでは、県内MLGs若者団体やオンラインでつながる海外の活動団体によるユースチャレンジが発表され、ILECの理事でもある藤井センター長、東副知事などがコメンテーターを務めました。その後、今回の発表者からYouth Commitment(若者宣言)~これからも世代や地域を超えて湖沼の保全と持続可能な利用に向けた行動~が宣言され、次期国際湖沼会議主催国のタンザニアからの会議参加案内の後、最後は東副知事による閉会の辞で終了しました。

 センターの研究や知見がMLGsの評価などに結び付き、琵琶湖のこと、世界の湖沼のことを考え、何ができるのかみんなで考えるきっかけになったイベントでした。

みんなのBIWAKO会議プログラム

 

世界湖沼の日2026 国際イベント プログラム

 

佐藤専門研究員らによるMLGsの説明(右から2人目)

佐藤専門研究員らによるMLGsの説明(右から2人目) 

ブースセッションリーダー紹介の様子

つながるブースセッションでのセンターの研究活動紹介

つながるブースセッションの様子

 

ブースセッションで説明を行う佐藤専門研究員

国際イベントでコメントを行う藤井センター長   

 

 

 

 

麻生川で生きものを見つけよう!「生きもの調査隊」に協力しました

 2026年8月23日(日)に、高島市朽木の麻生川で開催された「麻生川で生きものを見つけよう!生きもの調査隊」で当センターの佐藤専門研究員が講師を務めました。当日は小学生を中心とする子ども10名とその保護者11名の計21名が参加され、皆さんと一緒に麻生川の生きものを採集・観察しました。川岸や川底の石の裏、落ち葉だまりなどをタモ網を使って調べたところ、アユやヨシノボリ類、ウグイ、ドジョウなど6種の魚類をはじめ、様々な水生昆虫を見つけることができました。

 また、森林の環境が川の生態系とどのようにつながっているのかについて解説し、森林の適切な管理がビワマスの稚魚の餌となる生きものを育むことにつながることや、冷水性の魚類であるビワマスを保全することは、気候変動への適応という観点からも重要であることなどを紹介しました。こうした川と森のつながりについて、参加者の皆さんと一緒に考える機会となりました。

 観察の後には、ビワマスのパスタやうざくの試食会も行われました。実際にビワマスを味わいながら、その生態だけでなく食材としての魅力にも触れることができ、楽しみながらビワマスと森・川のつながりを学ぶイベントとなりました。

 

【論文掲載】琵琶湖の絶滅危惧プランクトン「ビワコツボカムリ」は 日本固有の亜種だった――中国産個体群を新亜種ムーランツボカムリDifflugia biwae junyangiとして記載――

 滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの一瀬諭 客員研究員、法政大学の島野智之教授らの研究グループによる論文が、学術誌 Journal of Protistologyに掲載されましたので、お知らせします。

 

(日本固有亜種とは、種としては日本国外にも分布するが、日本の個体群が形態的・遺伝的な差異によって種内の別のまとまり(亜種)として区別され、かつその亜種が日本にのみ分布するものをいいます。身近な例では、ホンドギツネ(アカギツネの日本産亜種)やホンシュウジカ(ニホンジカの本州産亜種)が知られています。)

 

【概要】

  •  琵琶湖の有殻アメーバ(殻をもつアメーバ)で日本固有の絶滅危惧種であるビワコツボカムリ Difflugia biwae Kawamura,1918 について、中国・ムーラン湖産の個体群との詳細な形態計測解析を行った結果、両者が統計的に有意に区別できることが今回の論文で示されました。
  • この結果に基づき、中国・ムーラン湖産の個体群が新亜種ムーランツボカムリ Difflugia biwae junyangi Ichise & Shimano, 2026 として記載されたことにより、琵琶湖産のビワコツボカムリは亜種 Difflugia biwae biwae として琵琶湖のみに分布する、すなわち日本固有の亜種であることが明確になりました。
  • 今回の亜種記載により、琵琶湖固有亜種としての保全上の位置づけがより明確になりました。
  • 本研究は、日本原生生物学会が刊行する英文誌 Journal of Protistology(オープンアクセス)に掲載されました。

 

【解説】

(1)ビワコツボカムリとは

 ビワコツボカムリは、日本の淡水生物学の基礎を築いた川村多實二博士によって1918年に琵琶湖から新種として記載された有殻アメーバの一種です(川村,1918)。有殻アメーバとしては大型で殻の全長は最大で約0.38 mm、細長いラッパ状の殻に長い一本の突起(角)をもつ特徴的な形態をしています。国内では琵琶湖以外の湖沼では確認されておらず、琵琶湖の固有種と考えられてきました。

 滋賀県水産試験場と旧滋賀県立衛生環境センター(現・琵琶湖環境科学研究センター)による111年にわたる定期的調査では、1960年代の夏(8月)には本種が琵琶湖の夏季プランクトンの優占種となっていましたが、1970年代から次第に個体数が減少し1981年10月9日に生きた個体が見つかったのを最後に、それ以降生きた個体は確認されていません(一瀬ほか,2004)。湖底には現在でも殻が堆積していますが、生存個体の発見には至っていません。この状況を受けて、2005年から滋賀県版レッドデータブックに絶滅危惧種として掲載され、2025年版では「すでに絶滅した可能性が高い種」と評価されました。

 

(2)本研究から分かること

 2005年にYang & Shen によって中国・ムーラン湖から本種が記録・報告されたことで、ビワコツボカムリが中国にも生息することが明らかになりました(Yang & Shen, 2005)。その後、Ichise et al.(2021)は現在の国際動物命名規約に基づいてネオタイプ(新たに指定した模式標本)を指定し、国立科学博物館に登録・収蔵することで、本種の分類学的安定性を確保しました。

 今回の研究においては、琵琶湖産の個体群と中国・ムーラン湖産の個体群それぞれの殻の全長・体長(殻の胴部の長さ)・突起長などの計測形質を詳細に解析しました。その結果、両個体群の間に統計的に有意な形態的差異が認められ、ムーラン湖産個体群を新亜種ムーランツボカムリ Difflugia biwae junyangi Ichise & Shimano, 2026 として記載されました。なお、学名は中国産個体群を報告した Jun Yang博士への献名です。

 この新亜種ムーランツボカムリ記載により、琵琶湖産個体群は基亜種として区別され、琵琶湖固有亜種 D. b. biwae としての保全上の独自性が明確に示されました。

  

ビワコツボカムリ(上)とムーランツボカムリ(下)

(撮影:滋賀県琵琶湖環境科学研究センター、一瀬諭)

 

【論文情報】

【タイトル】New Subspecies of Difflugia biwae Kawamura, 1918 (Amoebozoa: Tubulinea: Arcellinida) from Lake Mulan, China

(日本語訳)中国ムーラン湖からのビワコツボカムリDifflugia biwae Kawamura, 1918 (Amoebozoa: Tubulinea: Arcellinida) の新亜種

【著 者】Satoshi Ichise and Satoshi D. Shimano

(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 一瀬 諭,法政大学 島野智之教授)

【雑誌名】Journal of Protistology

【公開日】令和8年(2026年)8月31日 オンライン公開

【論文掲載リンク】https://www.jstage.jst.go.jp/article/jop/57/0/57_e010/_html/-char/en 

                      DOI: 10.18980/jop.e010

【発表者・研究者等情報】

滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 環境監視部門 生物圏係

        一瀬 諭  客員研究員 

法政大学自然科学センター・国際文化学部

  島野 智之 教授

 

20260901試験研究成果の国際英文誌公開について.pdf