センターニュースびわ湖みらい第38号

びわ湖視点論点

滋賀県における光化学オキシダントの現状と取組

 皆さんは光化学オキシダントをご存じですか?
光化学オキシダントとは、自動車や工場等から排出される窒素酸化物や揮発性有機化合物が太陽の紫外線を受けて光化学反応を起こすことにより生じる、オゾンを主成分とした酸化性物質の総称であり、大気汚染物質の一つです。
 光化学オキシダントは高濃度になることで光化学スモッグを形成し、人体に影響を及ぼす可能性があります。健康被害としては目がチカチカする症状が多く、その他には涙が出る、のどが痛い、頭が痛い、せきが出る、吐気がする等の症状が起こります。
 光化学オキシダントが高濃度になったときには、県民の皆さんの健康の保護と生活環境の保全のため、法令に基づき光化学スモッグ注意報等を発令します。具体的には、光化学オキシダント濃度の1時間値が0.12ppm以上になり、気象条件からみてその濃度が継続すると認められるときに光化学スモッグ注意報を発令します。注意報発令時は外での激しい運動を避けるとともに、原因物質を抑制するため、不要不急の自動車の運転を控えるよう御協力をお願いしています。
 滋賀県における光化学スモッグ注意報の発令日数は、平成24年以降年間0~3日で推移しています。令和2年度から令和4年度までは注意報の発令はありませんでした。(令和5年度は5月17日に注意報の発令がありました。)


図1 光化学スモッグ注意報発令状況

 

 滋賀県域では16地点(内7地点は大津市管轄)に大気常時監視測定局を設置し、11種類の大気汚染物質を24時間365日測定し監視しており、うち13地点において光化学オキシダントの測定を行っています。国は大気汚染物質について環境基準(人の健康を保護し、および生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準)を定めていますが、滋賀県では光化学オキシダント(環境基準:1時間値が0.06ppm以下)のみ全ての測定局で非達成の状況が続いており、全国的にもほぼ同じ状況にあります。
 環境基準を達成するためには、さらなる光化学オキシダントの低減対策が必要であり、光化学オキシダントの濃度変動要因を明らかにしなければなりません。しかしながら滋賀県の大気汚染物質は県内で排出・生成されるものに加え、県外で排出される大気汚染物質の一部が風に乗り県境を越えやってきたり、移動過程で生成するものもあり、不明な点が多くあります。
 そこで、“光化学オキシダントの濃度変動要因の把握”をテーマに国や周辺自治体と連携し調査解析を行っています。原因物質となる揮発性有機化合物に関して詳細な調査を行い、光化学オキシダント生成への寄与が大きい物質を推定するとともに、大気常時監視測定局等のデータから光化学オキシダントが高濃度の事例を解析し、どのような条件(気温、日射量、風、原因物質の排出実態等)のときに滋賀県で光化学オキシダントが高濃度になるか推定を行います。
 現在、光化学オキシダントが高濃度になると見込まれる気象条件の日に時間を区切って大気を採取し、揮発性有機化合物の濃度や割合がどのように変動しているか調査しています。また、過去の測定局データを整理し、光化学オキシダントが高濃度となる条件を推定するための事例の抽出を行いました。これらの結果が光化学オキシダントの濃度変動要因の把握や対策につながるよう取り組みを続けていきます。
 滋賀県では専用ホームページを立ち上げ、光化学オキシダントを含む大気常時監視測定局における測定結果について、令和5年3月から1時間値のリアルタイム公開を開始しました。測定局別に表示することもできますので、お住まいの地域の測定結果を御覧いただくこともできます。この他にも注意報発令状況、濃度推移グラフ等をいつでも閲覧できますので、ぜひ御覧ください。


図2 滋賀県大気常時監視情報ホームページ

環境監視部門 大気圏係

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