全層循環の概要・仕組み

琵琶湖北湖では、春から夏にかけて、湖水が湖面から温められていくことで、湖面側の層(表層)と湖底側の層(深層)との間に水温が急激に変わる「水温躍層(すいおんやくそう)」が形成されます。表層水温が30℃前後になる真夏でも、水温躍層の下の水深20m以深では10℃前後のままです(図1上図)。

水温躍層が形成されると、上下方向に水が混ざらなくなり、躍層より下への酸素の供給が滞ります。加えて、深層では、湖底に堆積したプランクトンの死骸などの有機物の分解、あるいは水中や湖底にいる生物の呼吸などにより、水中に溶けている酸素(溶存酸素)の消費が進みます。

秋から冬にかけて、表層の水温が低下してくると※1、水温躍層が弱まり※2ながら徐々に深層へと下がっていき、表層から深層に向かって湖水の混合が少しずつ進みます(図1中図)。水温躍層が深層に達してなくなり、湖水の混合が湖底まで進むことにより、表層から底層(湖底直上の層)まで水温、溶存酸素の濃度、水質が一様になります(図1下図)。この現象を「全層循環」と言います。温帯域にある深い湖の多くでは、1年に1回の頻度で全層循環が湖全体に達し※3、湖底に酸素が供給されます。

2018年度(2019年3月)には、暖冬の影響も大きく、観測史上初めて、今津沖の深層の一部水域(水深約90mの水域)まで湖水の混合が十分に進みませんでした。また、2019年度においてもこの水域で全層循環が確認されず、2年連続で全層循環が未完了となりました。2020年度は3年ぶりに全層循環を確認しましたが、今後も調査を継続し、状況を注視します。

 

※1 水温が低くなると水の密度が大きくなることで、表層と下の水温が同じ層まで混合が始まります。

※2 水温差が小さくなり、密度差も小さくなります。

※3 全層循環が水深の浅い水域から深い水域に進み、湖沼全体に達することを「全循環」と言います。

 

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