琵琶湖生物多様性画像データベース

びわ湖の貝類

 びわ湖からは、巻貝、二枚貝あわせて56種の在来貝類が報告されています(西野、2009)。これは、これまで日本で記録された淡水産貝類の種数のほぼ4割にあたります(西野、2009)。このうち固有種は29種(亜種を含む)です。固有貝類が在来の貝類全体の種数に対する割合(固有率)は52%で、軟体動物は、1つの門としてはびわ湖の生物のなかで固有率の最も高い分類群です(Nishino and Watanabe, 2000)。
 ただ、それぞれの属の中での固有種数は、せいぜい1~2種という分類群がほとんどです。そのなかで最も多くの固有種を含む属は巻貝類のカワニナ属(Semisulcospira)です。びわ湖のカワニナ属は、カワニナ亜属(Semisulcospira (Semisulcospira))3種とビワカワニナ亜属(Semisulcospira (Biwamelania))15種が報告されています。このうちビワカワニナ亜属の15種すべてが固有種で、その割合はびわ湖水系に生息するすべてのカワニナ種数の82%に達します。このうちクロカワニナ、フトマキカワニナ、タテジワカワニナ、シライシカワニナ、タケシマカワニナ、オオウラカワニナ、ホソマキカワニナの7種は、1995年に新種記載されたものです(Watanabe and Nishino, 1995)。びわ湖のカワニナ類では、種数が多いだけでなく、種間や種内で染色体の数や大きさに大きな変異があることが知られており 、びわ湖の中で種分化がまさに進行中の「種群」(1)であると考えられます。
 20年ほど前には、びわ湖の浅い湖底に潜ってみると、どこでもカワニナ類をみることができました。カワニナ類はまさにびわ湖を代表する生物であり、びわ湖は「カワニナの湖」といってもよいと思います。ただ最近、びわ湖全域でカワニナ類をはじめとする在来貝類の数が減ってきています。減少理由として、びわ湖の水位操作による低水位のほか、工事等による土砂流入による生息環境劣化が指摘されています
 古びわ湖層からは、現生のカワニナ類としてはハベカワニナが、その他の現生貝類では、オオタニシ、ナガタニシ、イケチョウガイ、ササノハガイ、タテボシガイ、ホバエボシ、オトコタテボシ(=セタイシガイ)、セタシジミが約100~40数万年前の堅田累層から出土しています(松岡、1993)。なお堅田累層より古い古びわ湖層からは、現生貝類の化石は発見されていません。
 外来の貝類はスクミリンゴガイ、サカマキガイ、カワヒバリガイなど8種の他、複数種の外来シジミ類がびわ湖に侵入していると考えられています。また1999年に守山市の水路でニュージーランド原産のコモチカワツボが発見されました。この種は約100年前に当時ニュージーランドを植民地にしていたイギリスで発見され、その後ヨーロッパ全域に広がりました。日本では1990年に初めて発見され、その後各地に分布域を広げており、既にびわ湖周辺の河川や水路で確認されています(西野、1999)。

参考文献

  1. 西野麻知子(1999)新たに滋賀県に侵入した巻貝、コモチカワツボ. オウミア, 65: 4.
  2. 松岡敬二(1993)貝類化石からみた琵琶湖の生物進化. オウミア, 45: 4-6.
  3. Nishino, M. and N. C. Watanabe (2000) Evolution and endemism in Lake Biwa, with special reference to its gastropod mollusc fauna. Advances in Ecological Research, 31: 151-180.
  4. 西野麻知子(2009)とりもどせ!琵琶湖・淀川の原風景. サンライズ出版.
  5. Watanabe. N. C. and M. Nishino (1995) A study on taxonomy and distribution of the freshwater snail, genus Semisulcospira in Lake Biwa, with descriptions of eight new species. Lake Biwa Study Monographs, 6: 36.
  6. Kawanabe,H.,M.Nishino and M.Maehata (eds.)(2012) Lake Biwa : Interaction between nature and people. Springer, Dordrecht .

(1)種群:同じ地域にすむ、単系統の近縁な固有種の総称(びわ湖の固有種の項参照)
*執筆 西野麻知子

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