琵琶湖生物多様性画像データベース

びわ湖のあらまし

 びわ湖は、本州のちょうど真ん中に位置し、日本でもっとも広い水面をもつ湖です。湖面の標高は85.614m(大阪湾の干潮位からの高さ。東京湾中等水位からの高さは84.371m)で、ただ一つの流出河川(瀬田川→宇治川→淀川)と、人為的に掘られた「びわ湖疏水(そすい)」をつうじて大阪湾に流れ込んでいます。びわ湖の水は、これらの水系をつうじて滋賀県をはじめ下流の京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県にすむ1400万人の人々の生活・工業・農業用水に利用されています。

 びわ湖にたまっている水の量は約275億トンで、これは日本人すべての生活用水のほぼ2.5年分に相当します。しかし湖底に蛇口がついているわけではないので、湖水のすべてが水資源として利用されることはありません。私たちが利用できる水の量は、湖から流れ出る水の量にほぼ等しく、年によって異なりますが、45-50億トンと見積もられています。これは、近畿1450万人が年間に必要な生活・工業用水を十分まかなえる量です。

 びわ湖の水位は、明治38年に瀬田川を掘削してつくられた人工ダム「瀬田川洗堰」で人為的に操作され、年間に約1mの範囲で上下動しています。

 びわ湖は琵琶という楽器をひっくり返したような形をしていて、南側のくびれた部分を境に、大きく深い湖盆(北湖)と狭く浅い湖盆(南湖)に分けられます。またびわ湖の周囲には、内湖とよばれる小湖沼(湿地帯)がいくつも分布しています。北湖の透明度は、現在で年平均で6~7mありますが、南湖では2~3m、内湖ではさらに透明度が低くなります。北湖と南湖・内湖とでは、水質や生物相に大きな違いがあります。

 びわ湖の底生動物の中で、大部分の種が北湖でみつかっています。南湖にすむ種の数は、北湖のほぼ半分です。しかも南湖でしか見つかってない種は数えるほどです。底生動物から見るかぎり、現在のびわ湖の生物多様性は、北湖によって支えられているといってよいでしょう。

 ところでびわ湖は大昔から今の場所に存在していたわけではありません。400~300万年前には三重県伊賀上野市、270~250万年前には滋賀県甲賀市、250~180万年前には、万葉集で有名な額田王が活躍した滋賀県東近江市(旧蒲生町)にありました。現在のびわ湖の位置に深い湖ができたのが約100万年前です。その後、沈降や隆起によって湖の形や深さが変化し、現在の形態にほぼ近くなったのが40数万年前といわれています。

 このように、びわ湖の近くで、大昔に湖だったが現在は陸地になってしまった地域にみられる過去の湖底堆積物の地層を「古びわ湖層」とよびます。約100万年前までの古びわ湖層(堅田累層)からは、現在のびわ湖にすむカイメン類や貝類などの化石が多く出土しますが、それ以前の古びわ湖層から出土する現生種の化石は、ぐっと少なくなります。


*執筆 西野麻知子

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