滋賀県では、2目7科22種(亜種を含む)の両生類が生息することが知られています。両生類の中で、琵琶湖のような開けた水面が生息範囲に含まれるのは、カエル類の一部だけです。湖岸の植生が豊かな場所や水田地帯に隣接する地域には、様々な種が生息していますが、湖岸と周辺環境が道路等で寸断されていることが多いため、個体数は多くありません。オオサンショウウオが安曇川の河口付近で発見された例もありますが、定着はしていないようです。
湖岸の多くは、治水等の整備によって、人工護岸や公園化が進み、両生類の生息に適した環境は減少しています。北部には、植生が豊かで、傾斜の緩やかな湖岸が残存し、ヤマトサンショウウオやニホンアカガエル、ナゴヤダルマガエルなどの希少種が生息しているところがあります。そのような地域では、琵琶湖そのもので、繁殖する種もいる可能性があります。なお、在来のカエル類の卵塊は水底に沈むため、水深が深いところは酸欠に陥ることから繁殖に適しません。
湖岸で最も多く生息しているのは、外来種のウシガエルです。ウシガエルは在来種に比べて、大きく成長し、遊泳能力にも優れていますし、卵塊は水面にシート状に広がるため、深い水深にも適応しています。貪欲で、口に入るサイズなら、あらゆる小動物を捕食してしまいます。
最近の水田は、田植えの時期にしか水が無いところが多く、カエル類の繁殖に適さないところが増えていますが、琵琶湖の周辺には、今なお、水の豊かな水田が広がっている地域があります。一方で、コンクリート化されたり三面張(さんめんばり)の水路が増えて、排水や増水時などには水とともにカエルなどの水生生物が一気に流下してしまいます。琵琶湖の存在は、そのような流下個体の受け皿として、とても重要な役割を担っていると考えられています。
*執筆 田辺真吾・松井正文