ひとくちメモ


芽球
 淡水の動物も起源は海の動物であり、タンスイカイメンも海のカイメンから進化したものです。海の動物が淡水域に進出するためには、浸透圧調節の問題を克服するととともに、大量の水をもつ海洋ではなかった乾燥や凍結の問題も克服しなければいけなかったのです。それらは固着生活をおくる動物にとっては大問題です。そこでカイメンは乾燥や凍結という環境変化にも耐えうる芽球という構造物を体の中に作り、淡水域に進出することに成功したのです。
 芽球は数千個の細胞が殻に包まれたものですが、中の芽球細胞は乾燥や凍結にも耐え、環境が好転すると殻を破り(発芽)、そこから新しいカイメンを形成します。しかし淡水域に進出したカイメンの中には、海と同じように大量の水をもつ湖で長年の間、生息しているうちに芽球を必要としなくなり、芽球を作ることをやめてしまったものもいます。その例はバイカル湖やタンガニーカ湖にみられるカイメンの仲間です。同じ古代湖であるびわ湖のヤワカイメンももう芽球を作ることをやめようとしているのかもしれません。
 カイメンと同じ固着生活をするコケムシの休芽も芽球と同じように考えられています。
*執筆 益田芳樹