オウミア No.82
琵琶湖研究所ニュース
2005年1月
編集・発行/滋賀県琵琶湖研究所
〒520-0806 大津市打出浜1-10
TEL 077-526-4800
環境市民活動とGIS
近年、人々の環境意識が高まるなか、環境改善活動を実践する個人や団体が増えてきました。滋賀県でも県民、NPO等団体による琵琶湖を守る活動がますます高まりを見せています。しかしながら、このような活動を、いかしにして持続し発展させていくかは環境市民活動共通の課題でもあります。琵琶湖研究所では、GIS(地理情報システムを)等を応用し、市民が自主的に環境情報を収集・分析し、その成果を環境改善へ役立てる仕組みづくりを実践的に検討しています。
赤野井湾流域環境情報システム
(http://www.lbri.go.jp/akanoigis/)
WebGISという技術により、市民による水環境調査の結
果を各種マップと重ね合わせることができます。 |

COD濃度の分布(2002年平均)
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リン(PO4-P)の概算負荷量分布(kg/day) |

赤野井湾流域の河川網(水路網)での水の流向
何十メートルか離れただけで水源や流路が大きく異なり、
結果として水質特性が大きく異なることも、このシステ
ムを用いて住民メンバーが確認したりしています。
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【プロジェクト研究 】
双方向GISから見える環境市民活動の可能性と課題
1.はじめに
近年、河川など身近な自然に対する市民の環境意識が高まり、全国各地で多くの市民団体・学校が水質調査などの水環境調査を実施するようになってきました。また、本来ならば「調査」をベースとしながら、調査から水環境修復活動への発展や地域住民の参加促進や合意形成の実践を進めていき、環境改善活動を高めていく必要があります。しかしながら、実際には、「調査」の結果すら十分に生かし切れず、モニタリングの継続の難しさ、調査結果の分析評価の難しさなどから、「調査」の次のステップになかなか進めないのが実情です。
したがって、そのような活動を継続・発展させるための第一ステップとして、自立的、継続的に情報の共有を進め、その成果を活動へ生かしていく仕組みが必要だと考えています。そこで、プロジェクト研究「GISを用いた地域環境保全の対策検討手法の開発」では、赤野井湾流域を対象として、GISや情報技術を応用し、環境市民活動における自立的、継続的な情報共有化の仕組みづくりの事例研究を行い、その可能性と課題を探ろうとしています。
2.情報の収集・整理・発信の仕組みづくり
赤野井湾とその流域の水環境改善活動を行う住民グループ「豊穣の郷赤野井湾流域協議会(現在、NPO法人びわこ豊穣の郷)」では、1997年から流域内の約100地点でパックテストによる水質調査を実施しています(写真1)。調査で得られるデータは膨大な量となり、結果の整理のしかたが課題となりました。そこで私たちは、住民が可能なかぎり自分たちの力で調査結果を整理・分析し、さらにその成果を社会に還元していくための仕掛けや仕組みづくりを試みてきました。その結果、インターネットを通じた双方向型データベースづくり、会員によるホームページづくり、活動の成果をまとめた水環境マップ(写真2)づくりなどの様々な成果を生み出し、活動の持続と発展に一定の役割を果たすことができました。
3.双方向GISのシステムづくり
水環境マップづくりには、GISが大いに威力を発揮し、必要に応じてそれを適材適所で利用しました。
しかしながら、GISを他の地域へも応用し、琵琶湖全体の保全へつなげていくためには、このような草の根的なGIS利用だけではなく、ある程度は、システム化することも必要だと考えられます。その一つの方法として、双方向型のWebGISの開発を試みています(表紙の図)。このシステムの双方向性はまだ不十分な点がありますが、住民による水環境の分析に少しずつ使われるようになってきました。
4.今後の課題
こういった仕組みづくりを通じて、「びわこ豊穣の郷」では、ある程度、自立的、継続的に、情報の収集・整理・発信・分析検討が市民の手で達成できるようになったと考えています。
しかし一方で、いくつかの課題も明らかになりました。双方向GISを、より一層普遍的なシステムに成長させていくためには、どのような技術、仕掛け、工夫があれば達成できるのか、さらに試行錯誤する必要がります。
また、環境NPO活動に共通の課題「人、物、金、情報」のマネジメント能力をどのように高めるのか、またそれを支える政策はどうあるべきなのかの検討も不可欠です。
写真1 パックテストによる水質調査 |

写真2 水環境マップ(特)(監)
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(主任研究員 東善広)
【研究トピックス】
モンゴルで内湖を考える
琵琶湖の周りには23の内湖が現在残っています.琵琶湖研究所では,安定した湖沼生態系を維持・回復するための一つとして内湖の生物多様性の研究を進めています.琵琶湖のまわりにある付属湖沼としての内湖は,琵琶湖本湖の種多様性に大きく寄与していると言われますが,人工化などによって本来の機能が明瞭ではなくなってきており,寄与の程度を現状からは理解・評価するのは難しいようです.
こうした中,2004年7月にモンゴルの北部,ロシア国境に近いフブスグル湖とその周辺で生物相の調査をする機会を得ました.この湖と集水域についてはすでに本誌79号と63号とで紹介されていますので,ご覧ください.
フブスグル湖にも多くの内湖がありますが,時間が十分になく,図1に示す4カ所で本湖と内湖(一部の地点では一方のみ調査)の植物種を調べました.水温と出現種数との関係を見ますと,水温とともに出現種が増加する傾向が見られます(図2).なお図中の地名記号でハイフン(−)の後のA,Bは内湖,本湖の別を,T1〜T6はフブスグル湖西側にある浅水湖沼群での調査結果を示します.写真?〜?,?は北端部に近いハンフ川の河口デルタ,H2の地点の様子です.浜堤?によって本湖と分断された内湖ではスギナモ,タヌキモ,エゾノミズタデなど?十数種の生育が確認されましたが,水体が大きいため夏でも温度が上がらない本湖側では79号の写真でもわかるように水草がほとんど生育していません.
H1-Bは砂嘴で波浪は避けられていますが,エゾノミズタデ?など数種が見られたにすぎません.H2-Aは朝の8時に調べた水温なので16℃しかありませんが,日中はもっと高くなると思われます.H3-Aは内湖ですが,湧水の流入量が多く水温が常に低く,バイカモやシャジクモ類だけが生育していました.
ここで述べたのは水温との関係だけですが,本湖と一時的に分けられた内湖は本湖と異なる環境を持つことによって多くの水草の生育を可能にしているということがわかりました.内湖を考える重要な手がかりとなりそうです. (専門研究員 浜端悦治)
図1.フブスグル湖周辺の調査地点位置(上)
図2.水温と出現種数との関係(下) 写真 フブスグル湖の景観と植物:?〜?,?はH2付近,?はH1付近で撮影.
(主任研究員 早川和秀)
【お知らせ】
琵琶湖研究所は新たな試験研究機関としてスタートします
琵琶湖研究所は、平成17年度に滋賀県立衛生環境センターの環境部門と統合し、大津市柳が崎地先で現 在施設建設中の「滋賀県琵琶湖・環境科学研究センター」として新たにスタートします。本センターは、琵琶湖研究所と衛生環境センターの両機関が長年にわたり培ってきた知見と経験を生かしながら、琵琶湖と本県の環境に関する総合的な試験研究機関として、世界レベルの湖沼研究とより高度な環境に関する試験研究等のニーズに対応してゆくとともに、幅広い県民や事業者の方々の取組みも支援できるよう、試験研究の中核拠点を目指します。
滋賀県琵琶湖・環境科学研究センター(完成予想図)
琵琶湖研究所閲覧室の休室のお知らせ:
本研究所移転に伴う図書資料の移設作業のため、
平成17年4月1日から5月末まで
図書資料の一般閲覧は休止いたします。
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〈本センターの主要機能〉
○試験検査:琵琶湖水質、水環境、大気等の監視・分析
○調査研究:琵琶湖と各種の環境問題に関する調査研究
○情報管理:環境情報や研究情報の収集、データベース化、解析
○研究交流:試験研究機関、大学等との研究交流、研究者の受入れ等
○住民支援:情報提供、研修受入れ等による住民の取組み支援等
○企画調整:行政、社会ニーズの把握と反映、他の研究機関との連携強化等
○広報啓発:環境情報、研究情報の広報、情報交流 |
第23回 琵琶湖研究シンポジウム開催のご案内
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テーマ 「琵琶湖研究所の最新の研究動向と展望」
1.日 時 2月28日(月) 9時30分〜16時20分
2.場 所 琵琶湖研究所ホール
3.プログラム
4.申込み 当日会場にて受け付けます。
5.問い合わせ先 TEL 077-526-4800 担当 金子、辻村、石川
午前の部(9:30〜12:15)
・研究所の取り組みを振り返って 中村正久
・求められる森林の生態学的管理 金子有子
・ノンポイント負荷の湖内水質への影響と制御の可能性 大久保卓也
・双方向GISシステムから見える環境市民活動の可能性と課題 東 善広
午後の部(13:15〜16:20)
・琵琶湖環境の鍵を握る生物多様性:湖岸および内湖 西野麻知子
・塩津湾の水質と北湖の環境:解明されつつある物理現象の影響 焦 春萌
・琵琶湖未来酸素計画−過去・現在そして混沌 熊谷道夫
・湖底環境の変化:微生物は何を語るか 中島拓男
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